[アニメ感想] ゼーガペイン - ZEGAPAIN - 第26話 「森羅万象」 (最終回)
第26話 「

あらすじ
第26話のあらすじ、主要スタッフはアニメ公式サイトから引用しておきます。
脚本:関島 眞頼 絵コンテ:下田 正美 演出:工藤 寛顕 作画監督:大貫 健一(キャラ)、西井 正典(メカ)
「オレはもう潰れねえぇぇぇーっ!」キョウは絶叫し、ゼーガペイン・アルティールでガルズオルムの機動部隊を次々と撃破する。
超巨大デフテラ「サバト」を攻撃するオケアノス艦隊は苦戦を強いられ、撤退を余儀なくされた。ドヴァールカーのイゾラ司令は軌道基地「クラウド」を強襲するが、ガルズオルムの絶対防衛線はトガのゼーガペイン・アルティールを持ってしても破れない。
なおも侵食拡大する「サバト」はついにすべてのサーバーを呑み込んでしまう。
最終決断を迫られるイゾラ司令の前に、キョウのゼーガペイン・アルティールが現れる。最後の希望の光、ゼーガペインがガルズオルムのアンチゼーガに立ち向かう。
人類の未来と進化への野望をかけた最後の戦いが始まった。
ストーリー&感想
いかにもゼーガペインらしい、テンションが高いんだけど、爽やかでいて切ない感じの最終回だった。
振り返ってみれば、第6話で明かされた絶望的な状況。第13話のカミナギ消失といった衝撃的な展開。そういった数々の苦難を乗り越えられたのは、やはりキョウちゃんというキャラクターの賜物だろう。彼を熱血バカっぽい設定にしたのは大正解。頭はいいんだけど小賢しい言動を一切しない、妙な熱血パワーは、見ていて気持ちよかった。
練りに練られた数多くの伏線、ハードなSF設定、「痛み」という一貫したテーマも見逃せない要素である。スタッフの姿勢にブレがない点も評価できる。また、4年前に放送された時には気付かなかったことが、BS11の放送で発見できたことも収穫だった。改めて作品の奥深さを感じた次第だ。
オープニング & Aパート

※キャプチャ画像はテレ東で放映された時のものです(以下同様)
今回は尺の都合もしくは演出効果を狙ってか、いつものオープニングは無し。いきなり本編からスタートする。ガルズオルムが量子ポータルを自爆させたことで、浮き足立つセレブラント陣営。オケアノスが地球に帰還することが困難となり、最終作戦=プロジェクト・リザレクションの先行きはは楽観を許さない状況に陥る・・・。
リザレクションシステムにより肉体を取り戻したキョウは、シズノと共にアルティールに搭乗。ジフェイタスからの脱出を目指していた。アルティールの中には、人類復活プログラムと舞浜サーバーを収納したホロメモリーが物理収納されている。人類の行く末も、舞浜の幻体たちの運命も、すべてキョウとシズノに託されているのだ。しかし、敵の攻撃は熾烈を極め、やすやすと通してはくれない。
そんな中、「16歳の記憶が二つある」というキョウの言葉を皮切りに、前バージョンのキョウとシズノの回想シーンへ。シズノが人間になれないことをカミングアウトする場面、第1話 「エンタングル」冒頭でキョウが自爆するまでの出来事が描かれている。そして、そんなほろ苦い過去を振り払うように、キョウは「オレはもう潰れねえぇぇぇーっ!」と絶叫。アルティールの行く手を阻むアンチゼーガ・マインディエに突撃していく。記憶は戻ったのに、現バージョンの熱血バカっぷりは健在。これでこそ我らがキョウちゃんだ!
ジフェイタスに乗っ取られたオケアノスでは新たな動きがあった。クリスとメイイェンがフリスベルグでブリッジに突入したのだ。ジフェイタスの地下にある地球みたいな光の球が弱点であると推測したメイイェン。それに対し、敵の制御下にあるレムレスは明言は避けたものの、彼女の推測を認める発言をする(どうやら完全に乗っ取られていた訳ではなさそうだ)。確証が得られたことで、作戦フェーズIVの肝であるジフェイタス破壊を実行するため、クリスたちはQL満載のオケアノスを光の球にぶつけることになった。
現実世界で激戦が展開されている、その頃。舞浜サーバーのタコ公園には、幻体となったシンが姿を見せていた。アルティールとの戦闘でかなりのダメージを負ったらしく、身体が崩壊しかけている。たまたま居合わせたカミナギは倒れたシンの身体を抱き起こすが、シンは「友達」であると言い残し息を引き取っていった。「永遠なんて・・・もうこんなこと止めさせてよ・・・キョウちゃぁぁぁぁぁぁああああん!!」―カミナギの叫び声が舞浜の街に響き渡った。前回のBパート同様、サーバー内でも感情表現が出来るようになったようだ。
カミナギの叫びに呼応するがごとく、月面で大規模な爆発が発生。クリスたちが、ジフェイタスの中枢にオケアノスを体当たりさせたのだ。その爆発は、地球軌道上にいたドヴァールカーからも目視できるほどで、イゾラ司令は愕然となる。一方、指揮系統を失ったガルズオルムの戦闘メカは大混乱。 この機に乗じて、ドヴァールカーは攻勢に打って出る。そしてその直後、地球衛星軌道基地「クラウド」の量子ポータルが稼働。爆煙の中からアルティールが姿を見せる!
☞ 第22話 「ジフェイタス」の司令官会議で初登場したルヴェンゾリのオストロバ司令。やっとセリフが付いたにもかかわらず、敵の量子ポータル自爆の巻き添えを喰って死亡か?声優名はEDのキャストで流されなかったが、「ゼーガペイン ビジュアルファンブック」(P.111)によると、佐藤利奈さんとなっている。
☞ アルティールのモニターのVer.2.0.1なるバージョンが表示されている。以前は無かったので、第25話 「舞浜の空は青いか」で積層化QLをチャージした影響か、もしくは生身のキョウが操縦するためにバージョンアップされたのかもしれない。

アルティールのモニターの比較(第1話と第26話)
Bパート

ジフェイタスの破壊に成功したものの、北極基幹サーバー「サバト」が自律稼働モードに移行。デフテラ領域の拡大はストップしていなかった。このままいくと、あと9時間7分で地球は完全にデフテラ化してしまう。それを食い止めるべく、キョウとシズノが立案した作戦は、クラウドの制御システムに侵入し、デフテラ・コアをサバトに撃ち込むという破天荒なもの。「すげえだろ!こういう作戦はオレたちしか思いつかねぇぜ!!」と自画自賛のキョウちゃん(笑)。イゾラ司令は「無謀な」と呆れるが、こういう状況では勢いも重要ですぜ!で、システムへの侵入は生身の人間には無理ってことで、シズノが受け持つことに。別れ際の「落とし前は命で・・・ってのは無しな」というキョウちゃんのセリフと、その後の二人の会話がいい雰囲気。この時点での真ヒロインは、もう完全にシズノ先輩だったけど・・・。(つд`)
そんなこんなで シズノがシステムにダイブした後、しつこくもマインディエが出現。お互いにウィザードがいないってことで、キョウとアビスのガチンコ勝負に突入する。第1ラウンドは肉弾戦でパンチの応酬※、両者痛み分けの引き分けに。アビスの問いに対して、「んなのオレの知ったことか!自分で考えろ!バァーカ!!」というセリフが最高だ(笑)。そして続く第2ラウンドはメカ対決となり、ここでまさかの必殺技舞浜シャイニングオーシャンパンチが炸裂する。マインディエには、ほとんど効かなかったけど(笑)。けっきょくタイマン勝負は、光子翼ホロニックブレードでマインディエを串刺しにし、キョウちゃんの大勝利。派手なロケットパンチよりも、地味な新技の方が効果覿面ってのが面白い。
※殴り合いはシナリオの第1稿で削られたけど、コンテで復活したそうです(情報元:「ゼーガペイン ビジュアルファンブック」P.36)。
その頃、クラウドのシステムに侵入したシズノは敵の防御プログラムに手こずっていた。なかなか前進できず、そればかりかデータにダメージを負い始める、もはやこれまでかと思われたその時!舞浜サーバーからミナト達が駆けつけてきた。どうやら、アルティールの右腕がクラウドのシステムに触れたことで、侵入経路ができたらしい。ミナト達はシズノをサポートし、シズノはシステムの掌握に成功する。クラウドから射出されたデフテラ・コアはサバトを直撃し、サバトは壊滅。こうして地球はデフテラ化は回避され、プロジェクト・リザレクションはミッション・コンプリートを迎えるのであった。
各地でガルズオルム残存部隊との小競り合いが残ったものの、地球上からはデフテラ領域が消滅し、勝利を手にしたセレブラム陣営。臨戦モードが解かれたことで 舞浜サーバーのリソースに余裕ができ、システムのリセット周期は半年から1年に延長されていた。
オリジナル・シマが残した幻体修復プログラムでミナトの両足のドライダメージも完治。素晴らしい生足を披露している♥ ルーシェンやメイウーたちは舞浜サーバーに組み込まれ、舞浜南高校の生徒に。ネクタイの色から、ルーシェンは3年生、メイウーは1年生という設定のようだ。そして、この二人は幻体修復プログラムのバージョンアップの取っ掛かりを見つけ出していた。修復プログラムの機能をアップすることで、人工幻体であるシズノを人間にすることができるという。当のシズノは、クラウドシステムをハッキングした際のダメージで記憶障害になり、何のことやらさっぱりの状態だけど・・・。メイウーが、シズノが人間になった際の三角関係を心配しているけど、そこは四角関係でしょ!アッー!(笑)
一足先に人間に戻ったキョウはというと、海辺に作られた工場(看板は千葉県立舞浜南高校水泳部分室)で、リザレクションシステムの製造に取り組んでいた。ただし、地球上にたった一人の人類ってことで、ほとんどサバイバル状態。食料や物資の調達はドヴァールカーが行っているらしい。そんなキョウちゃんのようすを見に来た幻体のカミナギ。二人の会話が妙にいい雰囲気だ。「あと2年待ってくれ、卒業式には必ず出るぜ」と言うキョウに、笑顔でうなずくカミナギ。シズノは記憶障害になっちゃったし、この流れは完全にカミナギEND。ED曲もバッドENDを予兆させる「リトルグッバイ」ではなく、「キミヘ ムカウ ヒカリ」が使われていて、カミナギ大勝利ですな。
☞ 舞浜シャイニングオーシャンパンチの発案者はシリーズ構成・脚本の関島氏。紙一重でスベる危険もあり悩んだらしいが、会議の雑談で進言したら、下田監督と伊東氏の支持を得たそうだ(情報元:「ゼーガペイン ビジュアルファンブック」のインタビュー記事)。最終回はキョウのテンションの高さで乗り切っている部分もあるので、視聴者から見ても入れて正解だったと思う。
☞ キョウの両親、妹(未沙季)が登場していたシーンは、舞浜サーバーの中ではなく、キョウの記憶(夢)らしいッス。「ゼーガペイン ビジュアルファンブック」で次のように明記されている。
自分を起こす母親、リビングで新聞を読む父親、そして自分の先輩に対する片思いを茶化す妹。それはありふれた朝の風景であるが、すべては、サーバーから解放されたキョウの幻体になる前の記憶でもあり、夢の中のできごとであった。
「ゼーガペイン ビジュアルファンブック」P.81から

キョウの記憶の中にある家族
「ゼーガペイン ドラマCD」のEPISODE 3 our last daysでは、舞浜にオルムウイルスが蔓延した際、キョウの家族の姿はマンションから消えていた。おそらく、幻体化されることなく死亡したものと思われる。(つд`)
キョウの母親の声は第3話 「デフテラ領域」(姿を見せず声だけだった)と同じだけど、中の人は不明。残念ながら「ゼーガペイン ビジュアルファンブック」にも載っていない。ディータ役の中尾プロの声に似ているような気もするけど・・・。
☞ 砂浜に打ち上げられた貝殻は、第10話 「また、夏が来る」でカミナギが書いた自主制作映画のシナリオ「虹の記憶」、花は第18話 「偽りの傷、痛みは枯れて」のBパートを意識したものと思われる。

砂浜の貝殻と花
☞ ハヤセと一緒に歩いている3年生の女子生徒は、第10話 「また、夏が来る」に名前だけ登場した津村さち子。彼女はセレブラントであり、第一次オスカー攻略戦でデータ破損し修復不能な状態になっていたが、ミナトの脚同様に、オリジナル・シマがもたらした技術で復活できたようだ。
☞ Bパートのラストに登場したラジオは、キョウがリザレクションシステムを製作していた工場にあった物と同じ。ボロボロになったことで時間の経過を表し、天気予報(アナウンサーはフォセッタの声)が放送されていることで人類が地球上に復活したことを暗示している。

浜辺の工場にあったラジオ(左),砂浜に埋もれていたラジオ(右)
Cパート

そして幾時かが流れ・・・。浜辺近くの灯台が蔦で覆われてしまっていることから、2年どころか10年ぐらいの月日が経っているように見える。砂浜にはカミナギによく似た女性が一人。コップの水を飲み干した彼女は、お腹の中の子をさすり「早く生まれておいで―世界は光でいっぱいだよ!」と呟いている。キョウちゃんやシズノ、舞浜サーバーのみなさんが、その後どうなったのかは不明であるが、この先の希望を感じさせる綺麗な終わり方であった。
☞ 「ゼーガペイン ビジュアルファンブック」のスタッフ座談会(P.36)によると、「はやく生まれておいでよ」というセリフは、下田監督がアドリブで追加したらしい。ゼーガのテーマ(「生きること」の証としての「痛み」)に対する監督なりの答えが、このセリフに込められているとか。また、アフレコ台本では ラストシーンの女性は「女」としか書いていないそうだ。
☞ コップの水の中に草が入っていたが、飲み干した後にコップの中から消えている。どこに消えたのか非常に気になるが、コップを置こうとしているロングショットを拡大してみると、この時点で既に草が無いように見える(下図参照)。つまり、水を飲んでいるアップの場面と、それを後ろから撮影したロングショットの間に草が忽然と消えてしまったのだ。草を飲み込んだのか、アップの場面(上図1段目の左から2番目)とロングショット(上図1段目の左から3番目)は実は別の時間帯なのか、それとも視聴者にだけ見えるメタ的な幻なのか・・・。まったく分かりません。

消えたコップの中の草
まあそれは兎も角、草は何かの象徴だと思うので、「水の中の草」というフレーズで検索してみたところ、それらしきものを発見!イザヤ書(旧約聖書の一つ)の第44章に――
1) しかし、わがしもべヤコブよ、わたしが選んだイスラエルよ、いま聞け。
2) あなたを造り、あなたを胎内に形造り、あなたを助ける主はこう言われる、『わがしもべヤコブよ、わたしが選んだエシュルンよ、恐れるな。
3) わたしは、かわいた地に水を注ぎ、干からびた地に流れをそそぎ、わが霊をあなたの子らにそそぎ、わが恵みをあなたの子孫に与えるからである。
4) こうして、彼らは水の中の草のように、流れのほとりの柳のように、生え育つ。
という文章があり、どうやら受胎とか新しい生命の誕生を示唆しているようだ。監督が、これを狙ってやったのかどうかは分からないけど、さもありなんって感じがする。最後の最後まで深い!深すぎるよ!ゼーガペイン!!
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関連サイト
■ ZEGAPAIN (アニメ公式サイト)■ ゼーガペイン Blu-ray BOX (バンダイビジュアル)
■ アニメ ゼーガペイン (BS11デジタル)
■ あにてれ ゼーガペイン (テレビ東京)
■ ゼーガペイン (Wikipedia)