[アニメ感想] Phantom~Requiem for the Phantom~ 第10話 「終幕」
第10話 「終幕」
アニメや原作ゲームの内容に触れています。ネタバレにご注意ください。
あらすじ
第10話のあらすじはテレビ東京・あにてれ Phantom~Requiem for the Phantom~から引用しておきます。
「殺し屋でも人形でもなく、君が君として生きていくための名前」
そう言って玲二はアインに【エレン】と名付けた。このまま二人でどこまでも遠くへ行く、はずだった・・・。しかし、玲二はインフェルノの手に、エレンはサイスの手にそれぞれ落ちてしまった・・・。
クロウディアの説得もあり、玲二はサイスを殺す事を決意する。組織に対し身の証を立てるため、いや、何よりもエレンを解き放つために・・・。
サイスはロシュネンコという武器商人の手引きで国外に脱出を図っている様子。
先行したリズィと合流した玲二。が、裏切り者は信用出来ないと、リズィは玲二に銃を突きつける。すると玲二はリズィの目の前で、薬室の1発だけを残し弾倉を捨てる・・・。
「1発じゃ、あんた達とケンカすることは出来ない。だがサイス一人を殺すには事足りる」
携えるのは、込められた銃弾ただ1発と初めて望んで抱いた殺意・・・。
ストーリー&感想
今回はゲームでいうところの第1章のラストです。ストーリーの流れは原作ゲームに準拠していますが、変更箇所や削られた箇所が意外と多く見受けられました。
Aパート

玲二~回想と鬼気~
インフェルノに裏切り者の嫌疑をかけられ、囚われの身となった玲二。逃亡途中にエレンと交わした会話を追想していたところ、突然部屋の扉が開いた。扉を開けたのはクロウディア。サイスの居場所が掴めたらしい。
冒頭の回想シーンはゲームの会話をベースにしていますが、玲二のセリフや場面設定が変更されています。
相違点 | アニメ | ゲーム |
場面設定 | 街に入る前の車中(回想) | 街に入ってエレンが現金調達に向かう際 |
会話の流れ | 玲二「エレン・・・」 ↓ エレン「何?」 ↓ 玲二「この名前で呼んだら、君がどんな顔をするのか見てみたかった」 |
玲二「エレン・・・」 ↓ エレン「何?」 ↓ 玲二「いや、いい、何でもないんだ」 ↓ 玲二(エレンの反応を考える) ↓ エレン(エレンと呼ばれた際の自分の自然な反応に驚く) |
クロウディアが監禁されている玲二に近づき、サイスの情報を知らせるシーンはアニメオリジナル。こういった描写はゲームにはありませんし、監禁されている玲二はこんなに目をぎらつかせていません。ゲームの玲二はいたって冷静です。

サイスの逃走計画
サイスは旧知のロシュネンコと連絡をとり、逃走経路を確保。アインを連れ、出迎えの船が来る港に向かっている。一方その頃、リズィはサイス追撃チームを集め状況説明を行っていたが、そこにクロウディアの乗るF40が乗り付ける。クロウディアは玲二を追撃チームに加えるように命令。それに対してリズィは反発するが、クロウディアに説得されて渋々ながらも受諾するのであった。
サイスとロシュネンコ大佐(元KGBの重鎮、現在はユーロマフィアの一員)の会話の流れは、ほぼ原作ゲームどおり。ただし、サイスが語っていたシェイクスピアの例え話はアニメオリジナル。一方、ゲームではロシュネンコ大佐が「ファントム」の噂話をしたり、サイスがロシュネンコ大佐の秘密(弱み)を握っている件が語られています。アニメでは尺の都合で削除したのでしょう。
リズィが手下を集めて任務の説明をしているシーンは全てアニメオリジナル。クロウディアがフェラーリF40で乗り付け、玲二を追撃チームに加えているので、アニメ冒頭シーンの続きという位置付けでしょう。

サイスとアイン
港湾地区に到着したサイスとアイン。サイスの行動に疑問を感じたアインはその理由を尋ねるが、サイスの怒りを買い平手打ちされて謝罪。その直後、サイスのケータイにロシュネンコから電話が入る。どうやら、逃亡計画がインフェルノに勘づかれたらしい。サイスは追撃チームを迎え撃つため、ケースの中からオートマグを取りだし、それをアインに手渡す。
クロウディアとマグワイア
同じ頃、クロウディアはマグワイアに状況を報告。マグワイアはツヴァイを追撃チームに加えたことに言及するが、クロウディアは全ての責任を負うと言明。そして、自分の信じるものは「任務で人を殺してきた者が自ら望んで人を殺めたいと思う衝動」であると唱えるのであった。
アインが「マスター・・・なぜこんな?」と尋ね、サイスが彼女の頬を叩く描写はゲームにもあります。ただ、アニメのサイスが掌で平手打ちしているのに対して、ゲームのサイスは手の甲で頬を叩いています。また、ゲームにはアインの変化に対するサイスの考察もあるのですが、アニメでは全て削除。おそらく尺の都合でしょうが、アインの耐用年数(寿命)とか、ツヴァイの変化にも言及しているので、ちょっと残念。
リズィが手下や玲二を連れ、車で目的地へ移動している描写はアニメオリジナルです。ちなみにゲームでは、その目的地はサンフランシスコの港湾地区。サイスはサンフランシスコの港から船に乗り込み、カナダへ渡り、その後に極東へ向かうという設定になっています。
サイスがケースの中からコレクションの愛銃を取り出し、オートマグをアインに手渡す描写は、セリフを含めてほぼゲームどおり。違いはケースの数で、アニメでは1つでしたが、ゲームでは4つ抱えています(ナレーションでそう言ってます)。
クロウディアとマグワイアの会見はアニメオリジナルで、尺かせぎというよりも、クロウディアの女狐っぷりを描くために挿入したものと思われます。

リズィの逡巡、玲二の決意
現場に到着したリズィの追撃チームと玲二。ここでリズィは頭に銃口を向ける。クロウディアの命令で玲二を連れては来たものの、完全に信用しているわけではないようだ。それに対して、玲二は拳銃のスライドを引きイジェクションポートから弾を排出。薬室には残した1発だけで、サイス一人を殺すには事足りると言い切る。
エレンとの再会
追撃チームはコンテナが積まれた埠頭に散開。サイスとその援軍の出方を探るが、敵は布陣を整えていたようで、次々と射殺されていくリズィの手下たち。しかし、リズィの追撃チームも玄人の集まりだ。リズィを筆頭に反撃を開始。戦況は拮抗状態となる。そんな中、玲二はサイスを探すため単独行動に出て、偶然にもエレンと再会を果たす。しかし、玲二が話しかけてもエレンは銃口を向けたままだった・・・。
リズィが玲二を信用していない件は、ゲームもアニメも一緒。玲二が拳銃のスライドを引き、イジェクションポートから9mm弾を排出する描写も同じ。しかし、大きな違いが一つあり、それは玲二が握っている拳銃です。アニメではクロウディアが事前にベレッタM92FSを手渡していましたが、ゲームではリズィが現場でグロック19を手渡しているのです。弾数が一緒(15+1発)なんだから、直線的デザインのグロック19の方が作画しやすいのにw
リズィたちが敵に取り囲まれて銃撃を受け、玲二が単独行動に走る展開は、ほぼゲームどおりです。アニメではリズィの手下が「兄貴の仇」と言い玲二に銃口を向けていましたが、ゲームでは「逃げたから追い掛けてきた」と言ってます。まあどちらにせよ、この手下はエレンに射殺されるわけですが、死に様はアニメの方がいいかも。何しろゲームでは、マグナム弾で頭を半分吹き飛ばされてますから。(((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル
リズィの手下を射殺した後、エレンが一瞬姿を見せていましたが、この部分はアニメオリジナル。ゲームのエレンは手下を射殺した後に、射撃ポイントから一切動きません。しびれを切らした玲二が飛び出してくるのを待ちかまえる作戦をとります。そして玲二はその作戦にまんまと引っ掛かるのですが、なぜか敵が撃ってきたのは2発だけ、それも脚ばかり狙ってくる。このことから、玲二は狙撃手の正体がエレンではないかと思い始め、確認に向かったところ、彼女とバッタリ遭遇。お互いに銃口を向け合うという展開になります。明らかにゲームの方が見応えあるのですが、尺の都合で変更されたのでしょうか?
Bパート

エレンの迷い
コンテナヤードの一角でエレンと向かい合い、説得を続ける玲二。しかし、再びサイスの手に落ちたエレンに、玲二の呼びかけは通じなかった。そして突如として鳴り響く新たな銃声。銃弾は玲二の左頬をかすめ、一筋の赤い線を刻んでいた。銃撃したのはサイス。まさかの本人登場に動揺する玲二。サイスはアインに玲二を殺すよう命令を下す。玲二の拳銃の薬室に装填されている銃弾は一発のみ。サイス一人だけなら強行策に出られるが、エレンが銃口を向けているため身動きが取れない。為す術なく、いよいよここまでかと思われたが、その矢先、玲二の後方から叫び声と銃撃音が響き渡った。リズィが援軍として駆けつけたのだ。
このシーンの流れはゲームどおりですが、細かい部分が変更されています。
①玲二とエレンが対峙している時のセリフが追加。
②サイスの撃った弾丸が玲二の頬をかする描写。(ゲームの玲二はコンテナの陰に隠れて弾を避けている)
③サイスの拳銃が変更されている。(ゲームではルガーP08)
④ゲームの玲二は、サイスの弾を避けた直後にエレンの姿を見失う。
⑤サイスの「アインを踏み台にした」云々のセリフはゲームには無い。
⑥助っ人に来たリズィのセリフが淡々としている。(ゲームはもっとフレンドリーで熱いセリフ)
⑦ゲームのリズィは、この時点で脚に銃弾を受けて負傷している。

追い詰められたサイス
リズィの登場でサイスはエレンを連れて逃走。リズィはエレンの注意を引きつけ、玲二がサイスを追うことになった。一方、サイスはエレンに対して、玲二たちの追撃を阻止するよう命令。自分はその隙に、迎えの船が待つ船着き場まで逃げる算段だ。しかし、殺意に満ちた玲二の追跡が迫るにつれ、コンテナの谷間を逃げるサイスに緊張と恐怖のプレッシャーが襲いかかる。
ここもほぼゲームどおりの展開ですが、ご多分に漏れず変更されている箇所が多々あります。
①玲二のファントム・エフェクトは、もちろんアニメオリジナル。
②サイスがロシュネンコ大佐の部下を誤って射殺する描写はゲームには無い。
③ゲームにあったサイスのモノローグ『自我は剥奪されているはずなのに、ツヴァイのこの気迫は・・・』云々が全て削除され、ただ逃げるだけの描写になっている。
④サイスを追いつめ狂喜する玲二の描写はアニメオリジナル。ゲームの玲二も怒りに我を忘れているが、ここまで狂っていない。

エレンを撃ち抜いた弾丸
オートマグの連射で脇腹の傷が広がり、出血が止まらなくなったエレン。力が入らず、フラフラと揺れる足で何とか船着き場まで辿り着いたが、そこでサイスに襲いかかろうとしている玲二を発見する。エレンは玲二の注意をそらすべく、脚もとを狙いオートマグのトリガーを引くが、玲二は気付かず。そればかりか、慌てて撃ったためオートマグがジャムってしまった。そうこうしているうちに、玲二の銃口がサイスに狙いを定めていた。そして、叫び声とともに引かれるトリガー。しかし、玲二の放った銃弾が撃ち抜いたのは、サイスではなくエレン。サイスを庇うため、玲二に人殺しをさせないため、横から飛び出してきたエレンが自分の身で銃弾を受けとめたのだ。
このシーンも流れはゲームに準拠していますが、玲二の『エレンに誓ったんだ、次は、自分の意志でトリガーを引くって』が削除。更に、肝心のエレンのモノローグ『マスターが殺される、玲二が人を殺してしまう、やめてそれだけは・・・、そんな結末だけは・・・』も削除。エレンンがサイスと玲二の間に割って入った理由は玲二を人殺し(自分の意志での人殺し)にしたくないからなんだけど、この二つのモノローグが削除されたことで、それが非常に分かりにくくなっています。読解力のある人は気付いたと思いますがw
アニメ内のオートマグのジャミングは、ストーブパイプ・ジャム(排莢ジャム)に見えます。この描写を見て、なぜアニメではオートマグの単発撃ち(スライドストップを押し上げながらの射撃)をスルーしたのかが理解できました。オートマグの単発撃ちはフィーディング・ジャム(次弾の装填ジャム)には有効かもしれませんが、ストーブパイプ・ジャム等には対処できないんですよね。おそらくスタッフまたは原作者がそれに気付いたのでしょうw

玲二の絶望
予期せぬ展開に、呆然となる玲二。サイスはこれ幸いと玲二に向けて銃を連射。銃弾を受けた玲二は、ふらつく足どりで海に落下。沈みゆく中で、エレンと交わした会話が再び脳裏をよぎるのであった・・・。
エレンを撃ってしまった玲二が呆然とする描写はゲームと同じ。ただ、その直後に玲二がサイスの銃弾を浴びるのはアニメオリジナル。ゲームの玲二は横っ飛びして海の中に飛び込み、サイスの銃弾を避けています。
玲二の回想シーンの中に出て来た「君のことを守る」云々というセリフはゲーム中にもありますが、ゲームではエレンを撃った直後に玲二のモノローグとして描かれています。
それから、「なぜ避けたんだ、そうまでして生きていたいのか、この手でエレンを撃っておきながら・・・」という玲二のモノローグが削除。これは次回に登場するものと思われます。
最後に電話連絡を受けたクロウディアとうなだれるリズィ、パソコンを見てほくそ笑むワイズメル、海岸に打ち上げられた玲二が描かれていますが、これらは全てアニメオリジナル。ゲームではリズィが玲二を海中から引き上げ、しばらくした後、クロウディアとマグワイヤが車で到着。そして、玲二の裏切りの嫌疑が晴れ、ファントムを襲名することになるのですが、これも次回に描かれるのでしょう。
銃器チェック
第10話に登場した銃器を適当に鑑定しておきます。何かお気付きの点がありましたらコメントください。
玲二のオート


玲二のオート
玲二(ツヴァイ)のオートはベレッタM92FS。第4話とは違い、今回はスライドを後退させた時にショートリコイルしています。していないシーンもありますがw
サイスの銃器コレクション



サイスの銃器コレクション
サイスのコレクション。アインに手渡したシルバーステンレスの大型オートは、言わずと知れたオートマグ。製造元はAM社→TDE社→AMT社と転々としていて、Phantom~PHANTOM OF INFERNO~ Perfect Graphics (晋遊舎ムック)[AA]ではAMT社製、Phantom ~Phantom of lnferno~ オフィシャルガイド-Memories of Assassin[AA]ではTDE社製となっていました。
サイスが使っていたオートは、意外と難しいですね。特徴をあげると以下のとおりですが、自分の銃知識ではこれに合致する銃がなかなか思い当たらないorz
①ハンマー無し
②スライドストップのすぐ後ろにセフティ
③スライドとフレイムの先端部(マズル付近)が削り取れている
④スライド前部と後部に斜めの溝あり
全体の雰囲気はSIG Proっぽいんだけど、細部が合致しない。①と④の条件だけならSpringfield Armory XDに見えなくもないけど、②・③と一致しない。マズルを正面から見た時の形(断面)はワルサーP99に似ているけど、他の構造が全然違っている。というわけで、よく分かりません\(^O^)/
2009年6月8日・追記 サイスのオートは、ロシア軍に制式採用されているIZHEVSK MP433 GRACHでした。ハンマーレスっぽく見えますが、ハンマー外装式です。ちなみに、セフティレバーを下げた状態がセフティOFFらしいので、アニメの作画は正確です。 |
なお、前述したとおり、ゲームでサイスが使っていたのはルガーP08です。作画が面倒なので変更したのでしょうか?
リズィの大型オート

リズィの大型オート
AMT ハードボーラーの7インチモデル。今回は射撃の際にハンマーがちゃんと倒れていましたw
リズィの手下のオート

リズィの手下のオート
リズィの手下(玲二を殺そうとしていた男)のオートは、作画のせいか左の銃と中央・右の銃が別物に見えますね。中央と右のキャプ画像だけならグロック17かな。
ロシュネンコの手下のライフル

ロシュネンコの手下のライフル
ロシュネンコの手下が使っていた狙撃銃は、ストックの形状からレミントンM700。
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関連サイト
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■ 月刊コミックアライブ オフィシャルサイト (メディアファクトリー公式)
■ ファントムシリーズ (ニトロプラス公式)
■ Phantom -PHANTOM OF INFERNO- (DVD VIDEO GAME公式/デジターボ)
■ ファントム-PHANTOM OF INFERNO- (PS2版公式/プリンセスソフト)
■ Phantom -PHANTOM OF INFERNO- (Wikipedia)
■ ファントム -PHANTOM OF INFERNO- シリーズ 銃火器データベース (MEDIAGUN DATABASE)
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