[アニメ感想] Phantom~Requiem for the Phantom~ 第9話 「名前」
第9話 「名前」
アニメや原作ゲームの内容に触れています。ネタバレにご注意ください。
あらすじ
第9話のあらすじはテレビ東京・あにてれ Phantom~Requiem for the Phantom~から引用しておきます。
記憶が戻った玲二(ツヴァイ)。望めば日本に帰る事も出来た・・・。しかし彼は、負傷したアインを置いて行く事は出来なかった。彼女に生きていて欲しかった・・・。裏切り者のサイスに加担した事により、アインは、今や追われる身。眠ったままの彼女を連れ、組織の追っ手から逃れるため、玲二はあてもなく車を走らせる。
だが、目を覚ましたアインはサイスの元へ戻ると言い出す。玲二と違い彼女には自分を証明するパスポートも記憶も無い。ただアインという名前とサイスだけが彼女のより所だった・・・。と、突然、玲二はパスポートを破り捨てる。驚くアインに玲二は言う。
「君を死なせたくない。見殺しにしたくない。・・・誰のためでもない、これは僕自身の意志だ。それを貫く。それが僕の、自分であることの証だ。ハンコと紙切れで裏付けてもらう必要なんて、ない・・・」
ストーリー&感想
クロウディアの策略に乗せられ、組織の裏切り者に仕立て上げられたサイスとアイン。一方、クロウディア邸で記憶を取り戻したツヴァイ(玲二)。クロウディアは日本への帰国か、自分と共に権力を登りつめるか選択を迫ったが、彼の決断はそのどちらでもないアインとの逃亡であった。ここまでが前回のお話。今回はゲーム第1章・クライマックスへ向けてのプレリュード。新しい希望、そして突然の別れが二人に訪れる・・・。
Aパート

アインの葛藤
ツヴァイの応急処置で一命を取り留めたアイン。車の中で目を覚ました彼女はサイスの身を案じ、サイスとの合流、それが無理なら自ら囮となり追っ手を撹乱すると言い出す。ツヴァイはそんなアインを思い留まらせるため、サイスとファントムが一緒に居ると思わせた方が賢明であると説得。ツヴァイの冷静な状況分析を聞いたアインは、ツヴァイの変わり様を指摘。更にそのきっかけが過去の記憶を取り戻したことにあると言う。そして、自分の身に付いて語り始めるアイン。
「あなたには帰る場所がある。本当の自分がある。でも、私には何も無い。私はアイン。あるのは数字だけ。帰る場所はマスターのもとだけ・・・」
このシーンのツヴァイとアインの会話は、ゲームのセリフをベースにしてはいますが、場面設定や会話の組み立て方が異なっています。アニメとゲームのキャラ設定の微妙な違いが、こういった会話の中にも現れているようです。
アニメ | ゲーム | |
場面設定 | 車中での会話 | 車に乗り込む前、廃工場の前での会話 |
会話の流れ | アイン:サイスと合流すると言い出す ↓ ツヴァイ:的確な理由をあげて制止 ↓ アイン:ツヴァイの変化に言及 ↓ アイン:ツヴァイが記憶を取り戻した件に触れる ↓ アイン:自分が帰る場所はサイスの所だけとつぶやき 眠る |
アイン:サイスと合流すると言い出す ↓ ツヴァイ:とりあえずアインを制止する ↓ アイン:記憶を取り戻した貴方には分からないと 反論 ↓ ツヴァイ:アインを引き留める理由を考える ↓ ツヴァイ:的確な理由をあげてアインを説得 ↓ アイン:サイスとの合流を思いとどまる |
なお、ツヴァイが途中ガソリンスタンドに立ち寄っていますが、この部分はアニメオリジナルです。リズィがツヴァイたちの足どりを掴む手がかりとして、伏線的に挿入したのでしょう。

インフェルノの幹部たち
強奪されたトラックは発見されたものの、トラックの荷台はもぬけの殻。更にサイスやファントムの行方も掴めぬとあって、インフェルノの二大幹部マグワイアとワイズメルはクロウディアに責任を果たすよう命令する。
アインの寂寥
行く当てもなく車を走らせるツヴァイ。カーラジオから日本に居た頃に聴いた曲が流れだしたため、無意識に音量を上げるが、その音でアインが目を覚ましてしまう。アインは、日本の話―吾妻玲二として暮らしていた頃の話―をするようツヴァイに言い、ツヴァイもそれに応じるが、アインの顔はどこか寂しそうだ。
梧桐大輔とクロウディア
クロウディアの手引きで、インフェルノのコカインを強奪した梧桐組の二人。梧桐大輔はクロウディアに挨拶の電話を入れるが、志賀はいまだにクロウディアを警戒している模様。しかし、上昇志向の高い梧桐はクロウディアを利用するだけだと言い切り、志賀の進言を一蹴する。一方、クロウディアは計画が順調に進んだことに喜びを隠せず、夜の摩天楼の下で天を仰いでほくそ笑むのであった。
このシーンは全てアニメオリジナル。強奪された輸送トラック発見、マグワイアとワイズメルに状況報告するクロウディアとリズィ、ツヴァイとアインの車中での会話(ラジオから流れる曲の話題)、梧桐大輔と連絡をとるクロウディア、どれもゲームにはありません。
クロウディア絡みのシーンは、尺かせぎというよりもストーリーを分かりやすくするための補完ですね。それに対して、ツヴァイとアインの会話はCDの宣伝にしか見えないw 個人的に主題歌を劇中曲として流すのは好きじゃないので、そう感じるのかもしれませんが。

破られたパスポート
「吾妻玲二・・・帰るべきだわ、あなたは」
突然、ツヴァイに向かい日本への帰国を促すアイン。アインと逃走する決意をしていたツヴァイは、その一言に驚き車を停車させる。今更帰れないと主張するツヴァイに対して、アインは吾妻玲二という過去があると言うアイン。アインの主張の根拠がパスポートにあると知ったツヴァイは、アインの目の前でそれを破り捨てる。ツヴァイのまさかの行動に、今度はアインが驚き・・・。
ツヴァイがパスポートを破るのはゲームと同じですが、そこに至るまでの会話の内容が微妙に異なります。ゲームの二人の会話の流れは次の通りで、アインの言動がかなり激しくなっています。おそらく、サイスのもとへ駆けつけることが出来ずイライラが募り、それをツヴァイにぶつけているのでしょう。アインの不安の裏返しと思われます。
↓
それをツブァイが拒否し、「もっと遠くまで行こう、最後まで」と言う
↓
「ふざけないで」と叱責するアイン
↓
自分から死にに行こうとする馬鹿を相手にか?と反論するツヴァイ
↓
サイスの意図を全うする義務があると言うアイン
↓
今度はツヴァイが「ふざけるな」と叱責
↓
「あなたにはもう関係ない」と暗にパスポートの件を持ち出すアイン
↓
ツヴァイがパスポートを破り捨てる
パスポートを破り捨てた後の会話の内容も微妙も異なり、アニメのツヴァイはアインの夢の話をを持ち出していますが、ゲームにはそういったセリフはありません。「自分自身の意志だ」云々のくだりは一緒ですが、ゲームのツヴァイが内心とは裏腹に強がっているのに対して、アニメの方はかなり腹を据えている印象を受けます。
Bパート

アイン~失った心の支え~
警察の検問を難なくくぐり抜け、モーテルで一夜を過ごすことになったツヴァイとアイン。アインの傷が癒えるまで、移動の合間に休息をとり、傷が完治したら遠くへ逃げる算段らしい。ツヴァイの無茶ともいえる計画を聞き、アインはとまどいを隠せないが、ツヴァイは「自分の意志で決めた」と言い、決意に迷いは無さそうだ。
ツヴァイは食べ物を買うため、モーテルの前にあるファストフードの店へ。ところが部屋に戻ってみると、扉が施錠されていて中に入れない。インフェルノの追っ手に発見されたことも想定し、拳銃を握りしめ部屋の中に突入するツヴァイ。しかし、消灯された部屋の中には追っ手の姿は無く、バスルームの方から光が漏れていた。そして、警戒しながらバスルームに近付き、中を覗いたツヴァイが見たものは、拳銃自殺を図ろうとしているアインの姿であった。
アインを刺激しないように静かに近付き、拳銃を取りあげたツヴァイ。一方、サイスの人形として生かされてきたアインは、サイスの支配を解かれたことでその支えを失いつつあった。虚ろな眼差しでツヴァイを見上げるアインは、ツヴァイの手で自分を殺してくれと懇願する・・・。
Bパート冒頭の警察の検問はアニメオリジナルで、それ以外の流れ(アインの自殺未遂)はほぼゲーム通りです。ただ、アニメではツヴァイが食料を調達に行き、戻ってきたらアインが拳銃自殺をしようとしていたという展開でしたが、ゲームでは身体を拭くからと言ってツヴァイを退室させ、カミソリで手首を切り自殺を図ろうとします。何の恥じらいもなくツヴァイに裸を見せていたアインが、突然女の子に目覚めるギャップ萌えな描写だったので、この変更は大変に残念であります!orz
それと、自殺道具を取りあげた後のツヴァイの反応もかなり違います。ゲームのツヴァイはアインの頬を平手打ちしています。アニメのツヴァイが淡々と語りかけているのとは対象的です。

追跡~リズィ~
ツヴァイに絡んでいたゴロツキを痛めつけ、情報を吐き出させるリズィ。インフェルノの追っ手は、刻一刻とツヴァイたちの近くまで迫ってきているようだ。
エレン~新しい名前~
アイン「もし今ここに追っ手が来たら、あなたは組織と私、どっちに銃を向ける?」
ツヴァイ「決まっている。組織を撃つ。僕は僕の意志で引き金を引く」
アイン「どうして・・・どうしてそうまでして、あなたは生き抜くの?」
ツヴァイ「・・・」
アイン「そういう生き方を私にもしろっていうの」
ツヴァイ「いやなのか?」
アイン「だって、私もう誰でもない。何もない。生きている理由も、役目も・・・」
ツヴァイとは違い、過去の明確な記憶も無く、かといってサイスの人形に戻ることもできないアイン。そんな彼女に、ツヴァイは人間として生きていくための新たな名前を与える。
ツヴァイ「エレン、エレンだ。今から僕は君をエレンと呼ぶ。殺し屋でも人形でもなく、君が君として生きていくための名前」
アインはその名前に、こそばゆさを覚えたものの、ツヴァイの提案を受け入れることになり、二人の逃走は続くこととなった。
追跡~クロウディアとリズィ~
ツヴァイとアインの逃走経路を探り出し、追跡するクロウディアとリズィ。「ツヴァイがサイスの側についたらどうする?」というリズィの問いかけに対して、クロウディアはただ一言「殺して」と即答するのであった。
リズィがゴロツキを痛めつける描写、クロウディアとリズィが車でツヴァイの逃走経路を後追いする描写はアニメオリジナル。ツヴァイがエレンという名前を付けるまでの流れはほぼゲーム通りですが、セリフや描写が異なっています。ゲームのアインは「インフェルノの追っ手を返り討ちにできるのか?」とだけ問い、自分を殺せるどうかは訊いていません。
また、ツヴァイの答えを聞いた後のアインの反応も大きく異なり、感情が高ぶって大声を上げ涙を浮かべます。そして、エレンという名前を授けたツヴァイはアインを抱きしめ、もの静かなアニメとは実に対照的な描写です。

突然の別離
翌日。玲二とエレンの乗る車は大きな街に入った。
いつまでもインフェルノの車を乗り回しているわけにもいかず、逃亡資金も必要ということで、玲二は一人で車と現金の調達へ。玲二が出かけた後、一人車内に残されたエレンはパスポートの紙片を眺めていたが、自分を監視する視線に気付き何食わぬ顔で車の外へ。
エレンは追っ手を路地裏に誘い込み返り討ちにしようとしたが、突然傷が痛み出し、逆にピンチに陥ってしまった。そして鳴り響く一発の銃声。しかし倒れたのはエレンではなく、インフェルノの追っ手だった。絶体絶命の彼女を救ったのはサイス=マスター。エレンにとっては、もはや過去の亡霊ともいえる人物であった。
一方、駐車場でめぼしい車を見つけた玲二は、ドアロックを解除しエンジンを作動させるところまでもってきていた。ところが、順調に進んでいた車の調達作業は突然のジ・エンドを迎える。玲二の頭部に銃口が突きつけられたのだ。その拳銃を握っているのはリズィ。その隣にはクロウディアの姿もある。玲二は抵抗することなく捕縛され、逃避行もジ・エンド。更にファントムもサイスの手に戻ったため、玲二はエレンと突然の別れを迎えることとなってしまった。
裏切りの代償
インフェルノに捕らえられた玲二。サイスの逃亡先を吐かせるため、彼にはリズィの容赦のない拷問が続いていた。しかし、いっこうにサイスの情報を吐く様子も無く、クロウディアは玲二が何も知らないと判断。リズィに対して尋問の中断を命じる。
リズィを退室させ、玲二と二人きりになったクロウディアは、ある取引を持ちかける。それはサイスを殺すこと。サイスを殺せば、その人形であるエレンには危害を加えないということらしい。そして、玲二の目の前に差し出される1丁の自動拳銃。玲二はエレンを救うため、その銃を受け取り、サイス暗殺を決意するのであった。
玲二とエレンが辿り着いた街は、ゲームではソルトレイク=シティという設定です。逃亡ルートに含まれていたヨセミテ公園の地名もスルーされていたので、アニメでは実在の地名を出さない方針なのでしょうか?
また、アニメではツヴァイが現金と車の調達に出かけていますが、ゲームではアインが現金を調達に行きます。これはツヴァイがスリの訓練を受けていないという理由から来ていて、ツヴァイに任されたのは車の調達のみです。あと、パスポートの切れ端も車内には残っていません。
エレンがサイスと再会するまでの流れも異なります。アニメでは車内に残ったアインが監視の目に気付き車外に出ますが、ゲームでは前述したとおり自らの意志で車外に出ています。そして、「エレン」という名前について思い巡らせていたら、いつのまにか尾行されるという致命的なミスを犯します。更に、自分はアインではなくエレンだから、自分の身を守るためとはいえ、もう人殺しは出来ないというジレンマに陥ってしまうのです。
サイスとの再会シーンも変更されていて、アニメでは手下が追っ手を始末していましたが、ゲームではサイス自らがルガーP08を使い追っ手を射殺しています。「ほとほと呆れた連中だなインフェルノというのは。私抜きではこうも無能な人材しか投入できんのかね?まったく」という名台詞が削除されたのも残念!
尋問室での玲二とクロウディアの会話は、かなり端折られていますが、玲二がサイス暗殺を決断するまでの流れは同じです。
銃器チェック
第9話に登場した銃器を適当に鑑定しておきます。何かお気付きの点がありましたらコメントください。
ツヴァイのオート

ツヴァイのオート
ツヴァイがガソリンスタンドで握っていたオートはH&K Mk23 Mod.0 SOCOM PISTOL。フレーム下部のレール形状とスライド前部に溝が無いことからPhase IIIモデルでしょうか。
スライドが延長されているのでH&K USP EXPERT。ただ、バレルも伸びているので「USP EXPERT with extended barrel」という架空のモデルかもしれませんw
アインのオート

アインのオート
アインのオートはLAM型フラッシュライトを装着したH&K Mk23 Mod.0 SOCOM PISTOL。ツヴァイのSOCOMとは異なり、スライド前部に溝があるのでPhase IIモデル。
リズィの大型オート

リズィの大型オート
リズィの大型オートは毎度お馴染みAMT ハードボーラーの7インチモデル。コルト・ガバメントのクローンです。前回はハンマーの作画ミスがありましたw
サイスの手下のオート

サイスの手下のオート
これは難しい。作画から見て取れる特徴は次の4つ。
①フレームがトリガーガードから先端までほぼ一直線で、先端部に切り取りが無い。
②トリガーガードに指掛けあり。
③マズルがスライドから少し出ている。
④マガジン底部の中央にランヤードリングらしき部品あり
これに全て合致するオートは思いつかないので、全体的な雰囲気からグロック17としておきます。
クロウディアがツヴァイに手渡したオート

クロウディアがツヴァイに手渡したオート
外観からするとベレッタ M92FSだけど、トリガーガードの指掛けが曲がりすぎw リアサイトも無いし、スライドの天面が切り取られているwww
<2009年6月2日・追記>
インフェルノの追っ手のオート

インフェルノの追っ手のオート
このオートもグロック17。
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関連サイト
■ ニトロプラス10周年記念 ファントムプロジェクト「ファントム」 (TVアニメ公式)■ Phantom~Requiem for the Phantom~ (TV東京・あにてれ)
■ 月刊コミックアライブ オフィシャルサイト (メディアファクトリー公式)
■ ファントムシリーズ (ニトロプラス公式)
■ Phantom -PHANTOM OF INFERNO- (DVD VIDEO GAME公式/デジターボ)
■ ファントム-PHANTOM OF INFERNO- (PS2版公式/プリンセスソフト)
■ Phantom -PHANTOM OF INFERNO- (Wikipedia)
■ ファントム -PHANTOM OF INFERNO- シリーズ 銃火器データベース (MEDIAGUN DATABASE)
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